2010年5月14日

夏の足音

夜の10時頃に空を見たら、北東の空にベガが見えた。もう夏がそこまで来ているのだ。


南の空に赤く光っていたのは、さそり座のアンタレス。これを目印に、同じくらいの高度を保ったまま少しずつ西に目を向けていくと、大きな乙女座がわりあいにすぐに見つかる。アンタレスは、非常に強く美しい星だ。火星と並ぶときは空に赤い星が二つ競うように見える(アンタレスは、アンチ・アレース=ギリシア神話のアレースは、戦いの神マルスMarsに相当し、どちらも火星とされているので「対火星」の意となる)のだが、火星とは違って輝きに威厳がある。
乙女座は巨大で、なんでこんなに遠くの星々をつないで星座を作ったのかと前々から疑問である。しかも、どう見ても乙女には見えないし。でも縁のある星だから、一応形を捉えて、その一等星を観察した。乙女座の一等星を和名で「真珠星」というのは興味深い。地上の石の名で天空の星を呼んでいるのがおもしろい。
また、天上には、北斗七星も7つきちんと柄杓のかたちに並んでいた。北斗七星を目印に北極星を探す。小さいころ、北極星は天の釘なのだと思っていた。天の釘が緩むと空が落ちてくるかもしれない。だから、しっかり空を支えていて、と。いまも心のどこかでそう思っているような気がする。


ところで、天体望遠鏡で初めて月を見たときの驚きはちょっと忘れられない。たしか10歳だったと思う。拡大して見た月は、ただのぼこぼこしたコンクリートのようなものだった。でも全然がっかりしなかった。むしろ、なあんだ、こんなものかあ、と、笑ってしまった。望遠鏡のレンズに映った月のざらざらとでこぼこを見たあとでも、目をレンズから離して肉眼で見る月が美しいという事実は何も変わらないということに奇妙な安堵感を感じたことも覚えている。


またいつか、天体望遠鏡で天体観測をしよう。

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