2012年1月5日

いとなみ

昨年は新たに、かぎ針編み、クロスステッチ、パッチワークに挑戦して、小さいものではあるが十数点を仕上げることができた。棒針編みではセーターを編んでいるが、こちらは未完成。

どれも本や動画を参照しながら見よう見まねでやってみたので、やり方がおかしいところもあるのだろう、×の数が図案と違ったり、編み目の数がわからなくなったり、ファスナーを上下逆につけていたことに出来上がるまで気がつかなかったりと、それぞれの作品に一つ以上はがっくりするミスがあった。それでも、作品として出来上がるとやはり嬉しい。工夫すべき点や今後の課題もはっきりする。そして、下手なりに一個一個完成させていくうちに、学び上達するものである。

刺繍を通して世界について考えるという体験も新鮮であった。刺繍には各国の伝統柄というのが必ずあるが、それぞれの図柄は、その国の人々にとって非常に身近なものを題材にしている。たとえばトナカイやノウサギをモチーフにした北欧のクロスステッチ、スイセンやアイリスの花を丁寧に再現したイギリスの刺繍など。
各国の刺繍図案を眺めたりモチーフについて調べたりしながら考えた:日常生活の中でなじみや愛着のあるもの・美しいと感じられるものを、刺繍でもって日々使うものの中に再現することは、それが存在する幸せや喜びを確かめるための人間の知恵なのだろうか。針を布地に通しながら、地道な作業に人を駆り立てるのは、綺麗なものの姿を手元に残しておきたいという焦燥感と欲望だろうかと思ってみたりもした。「欲」という言葉のイメージは刺繍の世界の可憐さにそぐわないようにも思えるけれど、肩は凝るし目も痛くなる作業が大好きという理由で人は古来から刺繍をしてきたのではないだろう。

刺繍も編み物も針仕事もひとりでする手作業なのだが、手を動かしているとどういうわけか「人のいとなみ」というようなことについて考えてしまう、そうすると孤独な作業ではなくなるのであった。


ところで、今年はまたチェロをやる。
ずっと、チェロが弾きたくてたまらなかった。
以前の日記に、編み目を揃える練習はチェロの練習に通じるところがあると書いたが、今年は手芸から学んだことをチェロの練習にも活かして、新しい方向性を探っていこうと思う。
細かい課題は色々あるが、大まかには、作品の大小に関わらずとにかく仕上げること、その完成を積み重ねることで次に進んでいくことを今年の目標としたい。

勉強と絵にもそれぞれ今年の課題を設けた。
時々、何を信じて生きていったらいいかわからなくなり、すごく混乱したり動揺したりしてしまう。自分の中に諦めと殺伐とした思いがあり、心に嵐が吹き荒れることがある。世の中も非常に不安定で、人々は寄って立つものを失くしてしまったように感じられる。でも理不尽なものに潰されるのは悔しい。自分自身には頼れるように、いろいろやってみよう。