本は例外として、持ち物はなるべく増やしたくないと思っているし、年齢とともにその傾向はますます強まっているのだけれど、それでも時々、ものを買ってしまう。
あるデパートにちょっと行ったら、最上階で市の催しをやっていた。スペースの一画には、地元の小学生がお城や有名建築物を描いた、写生会の入選作品がたくさん展示してあった。建物のある風景全体を四角の枠に捉えてきれいな色をつけてある絵がたくさんあって、入選だけあって上手だなあと感心した反面、そつがないなという印象のものも多かった。金賞を取った作品群には、他の入選作品にはない気迫や気品があって感心した。観察眼も色使いも、他のどれとも似ていない。金賞の中でも、城と空をいろいろな濃さの紫と青の点で描いた作品と、城のお堀を絵の具の色を全種類使って塗り分けたような作品がとくに印象的だった。絵を描く目的によって求められるものは異なるけれども、制約がほとんどないなかで絵を描く時には、写生した対象(実物)と形や色が同じかどうかということよりも、本人が自分の見る目と思考と感性によって「これだ」と感じるかたちをとらえ色をつければよいのではないかと、改めて思った(「つければよい」といっても、実際はその方がずっと難しい作業だ。本人の意図と技術なければただの偏屈か珍奇か出鱈目か滅茶苦茶になってしまう)。
子どもたちの絵を楽しんだ後、絵の展示の隣のスペースでやっていた物産展を少し見てたら、そこにいい焼き物があった。束摩焼というのだそうだ。この土地の空気をそのまま封じ込めたような焼き物である。墨絵のような色彩で、山々が彫ってある。私はこの土地の者ではないけれど、なんだか妙に惹かれた。手に取って一周させると、パノラマを見ているような高揚感があった。