2011年3月20日

溶ける

数日前、すごく寒かった日の夜に、昨年描いた2つの絵にタブローを塗った。
画材屋さんでは、絵の具が完全に乾く前に塗れる保護液や速乾性のあるスプレータイプのワニスも見せてもらったが、今回は絵が描き上がってから半年以上経っているしどこかへ送る用もなし、何も急がないので、オーソドックスなクサカベのタブローを使うことにした。これはダンマル樹脂をテレピン油に溶かしたワニスで、独特の臭いがあるうえ、塗る時はけっこうべたべたする。タブローは光沢が強く出るので落ち着いた質感を求める絵には向かないといわれるが、塗ってみたらてかてかするほどではなく、色をつけたばかりの時の鮮やかさが蘇ったように思った。でも1日くらいは臭いので、暖かい日の昼間にやったほうが絶対に良い。

今日は新しい絵の下塗りをした。目の細かい麻の12号のカンバスを買って、何も描かずに部屋の壁に立てかけておいて、2週間くらい毎日眺めてたのであった。

大きい筆とぼろ布で下塗りをしているときは作業に集中していただけだし、これから描こうとしているのも抽象的なものではないのだが、作業を終え、お茶をいれておやつを食べながら眺めてみたら、ここ一週間くらいの間に自分が感じたさまざまのことが溶け込んでいるような気がした。




2011年3月9日

梅の木にとまるうぐいすあり

暖かくなったと思ったら雪が降ったり、寒いと思って電気ヒーターをいれたら部屋の中が暑くなりすぎり、三寒四温というにはテンポがでたらめのような、なんとも先の読めない気候が続いている。それでも、3月に入ってからは、編み物がなんとなく季節外れな作業のような気がしているから、やはり春はちゃんと来ているのだろう。

今編んでいるセーター等(棒針)は、アフリカの子どもたちに手編みのセーター、マフラー、手袋、帽子、毛布などを送る活動をしているイギリスのチャリティー団体のひとつに送るつもり。手編みのものを児童施設やホームレスの人々や貧困地域の子どもに送る活動をしている団体がイギリスにいくつもあることを、最近になって知った。イギリスにいる間に編み物チャリティーを知っていたら絶対参加していたのに! ああ残念。

イギリスはチャリティー活動やボランティアがとてもさかんな国であるが、手編みを送るチャリティーへの参加も敷居が低そうである。たとえば、knit a square。20センチ四方の四角を編んで、事務局に送ると、そこで活動している婦人たちが、集まった四角をいくつも縫い合わせて大判のブランケットを作り、出来上がったブランケットをアフリカの子どもたちに届けてくれる。方形なら、セーターを編む技術がなくても、それどころか編み棒を手にしたことのない超初心者でも、最初の作り目と最後の伏せ止めを教わって、表編みができれば編める。高値で販売できそうな素晴らしい編み込みセーターを作れる人も、ガータ編みの四角が精一杯という人も、各人の技量に合わせて気負わずに参加できるところがいい。

ところで、チャリティー団体は星の数ほどあるから、自分が支援をしたい対象(私の場合は「劣悪な環境にいる子ども」)への活動、支援をしたい方法(今回の場合は「手編み」)での活動をしている団体を見つけても、そこが実際にどういう活動をしているかをよく見極めないといけない。税金対策としてチャリティーに登録して実質それらしいことは殆どしてない団体や、集めたお金の1割くらいしか実際に寄付していないような団体もけっこうあるのだ。でも、大変な熱意と信条を持って地道に活動している人も多く、そういう人々の姿勢には、深く考えさせられるものがあり、とても貴重な学ぶべきものがある。



2月に始めたかぎ針にも少しは慣れてきた。練習で編んだものは、台所で洗いものに使っている。アクリルたわしじゃなく、ウールの毛糸だけど、洗剤をつけなくても食器がぴかぴかになる。

というわけで、編み物はとてもいい気分転換になっている。BBCラジオを聴きながら、映画を見ながら、繊細で美しいショスタコーヴィチを聴きながら、じっと手を動かしている。

写真は兄弟に作ったかぎ針編みのコースター。身近な人に手編みのものをあげるのは気が引けるのでしたことがなかったけど、ちょっと何かしたい気になったのであった。