2011年3月20日

溶ける

数日前、すごく寒かった日の夜に、昨年描いた2つの絵にタブローを塗った。
画材屋さんでは、絵の具が完全に乾く前に塗れる保護液や速乾性のあるスプレータイプのワニスも見せてもらったが、今回は絵が描き上がってから半年以上経っているしどこかへ送る用もなし、何も急がないので、オーソドックスなクサカベのタブローを使うことにした。これはダンマル樹脂をテレピン油に溶かしたワニスで、独特の臭いがあるうえ、塗る時はけっこうべたべたする。タブローは光沢が強く出るので落ち着いた質感を求める絵には向かないといわれるが、塗ってみたらてかてかするほどではなく、色をつけたばかりの時の鮮やかさが蘇ったように思った。でも1日くらいは臭いので、暖かい日の昼間にやったほうが絶対に良い。

今日は新しい絵の下塗りをした。目の細かい麻の12号のカンバスを買って、何も描かずに部屋の壁に立てかけておいて、2週間くらい毎日眺めてたのであった。

大きい筆とぼろ布で下塗りをしているときは作業に集中していただけだし、これから描こうとしているのも抽象的なものではないのだが、作業を終え、お茶をいれておやつを食べながら眺めてみたら、ここ一週間くらいの間に自分が感じたさまざまのことが溶け込んでいるような気がした。




2 件のコメント:

  1. 私小説を読んでいるみたいです。
    下塗りなんですか。空みたいですね。
    きっと気持ちが溶け込んでいるのでしょう。
    見ていると不思議な気分になりました。

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  2. 下塗りは油彩の下ごしらえみたいなもので、何を描いたというんでもないのですが、たしかに空みたいにも見えますね。それに、11日以降、自分の中を行き来した様々な感情も混ざっているんだと思います。

    油彩って、うすい下塗りの上に濃い絵の具をのせても下色は生きていて、そこが次のステップでの怖いところでもあり、わくわくするところでもあり、実にスリリングです。また出来上がったらぜひ見てください。

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