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2011年6月16日

ハルジョオン



ハルジョオンの絵を描いた。

今回は、10歳の時に描いた「一輪挿しに挿した野の草」と同じテーマで描くことに決めていた。


工夫した点は二つ。

・この絵には白を使うことにした。小学校の時に野の花を描いたときに、当時絵を習っていた画家の先生から白の使い方を習ったから。先生の絵は白の使い方に特徴があって、雪景色を描いた絵などは、白の魔力とでもいうべき引力を持っていたのであった。
教えていただいたにもかかわらず、私はどういうわけか白を怖れていつもは使わないので、白い絵の具の蓋は完全に固まっており、それを開けるところから手間取ってしまった。でも、他の絵の具と混ぜて極細の筆でおそるおそる描いているうちに、案外悪目立ちしないものだという気がしてきた。今後は白も少しずつ使ってみようと思う。

・下地作りに時間をかけた。
カンバスは、Winsor and Newton のもの。大きな目地を真っ白に漂白してあるこのカンバスは、下塗りを一度した時点では、パンに液状の蜂蜜を薄く塗った程度の効果しかなく、目の粗さや白さが透けて見える状態であった。だから、表面が滑らかになるまで油で溶いた絵の具を、塗っては乾くのを待ち、塗っては乾くのを待つ、という作業を根気づよくやってみた。繰り返しとこの手の辛抱は私にとって苦痛ではないのでもどかしくはなかったが、乾くまでに部屋のほこりがついてしまうのには困った。何度も塗っているうちに光沢が出てきて、アンバーでおおまかな下絵を描く段階までには、それでひとつの単色の絵のようになっていた。絵の具が乾くにつれてカンバスの表情が変化していく様を毎日観察するのはとてもおもしろかった。

まだ出来上がったばかりで、今はただ嬉しくてほっとした気持ちだけ。
改善点は、今後絵の具が乾くうちに明らかになっていくだろう。
写真は、前回の隅田川の絵よりは実物に近いものが撮れたが、やっぱり何か違う。難しい。

一輪挿しは、4月に市内の陶芸工房の陶芸体験教室で作ったもの。実際のものには、五線譜の模様が彫ってある。この工房では、猫をテーマにした面白い焼き物をいろいろ作っている。

ハルジョオンがまだ咲いている間に完成してよかった。

さて、まもなく皆既月食が始まる。

2011年5月22日

「雨の隅田川」(油彩)



今年の2月に、一年くらい前に撮った写真をもとに、隅田川の風景の下絵を描いた。その後、少しずつ薄い色を重ねて、乾くのを待って、また色をのせて、という作業を繰り返して、昨日の夜中にようやく一段落した。実際はもっと暗いトーンなのだが、写真を撮ったら実物より明るくなってしまった。


*追記 2011/05/23 載せた写真が実物と随分違うので、昼間に撮り直し、差し替えました。

2011年3月20日

溶ける

数日前、すごく寒かった日の夜に、昨年描いた2つの絵にタブローを塗った。
画材屋さんでは、絵の具が完全に乾く前に塗れる保護液や速乾性のあるスプレータイプのワニスも見せてもらったが、今回は絵が描き上がってから半年以上経っているしどこかへ送る用もなし、何も急がないので、オーソドックスなクサカベのタブローを使うことにした。これはダンマル樹脂をテレピン油に溶かしたワニスで、独特の臭いがあるうえ、塗る時はけっこうべたべたする。タブローは光沢が強く出るので落ち着いた質感を求める絵には向かないといわれるが、塗ってみたらてかてかするほどではなく、色をつけたばかりの時の鮮やかさが蘇ったように思った。でも1日くらいは臭いので、暖かい日の昼間にやったほうが絶対に良い。

今日は新しい絵の下塗りをした。目の細かい麻の12号のカンバスを買って、何も描かずに部屋の壁に立てかけておいて、2週間くらい毎日眺めてたのであった。

大きい筆とぼろ布で下塗りをしているときは作業に集中していただけだし、これから描こうとしているのも抽象的なものではないのだが、作業を終え、お茶をいれておやつを食べながら眺めてみたら、ここ一週間くらいの間に自分が感じたさまざまのことが溶け込んでいるような気がした。




2010年9月20日

A summer evening (oil on canvas)





チェロの先生を描きました。

2010年4月8日

リサイタルの絵


イギリス生活の最後には、それまで出会った人たちへの感謝の気持ちを込めて、自宅でリービング・パーティー&展覧会を開いた。
この家は借りるにはなかなか苦労した(学生の私には高額なデポジット、要求されたたくさんのリファレンス)し、とくに面白い町にあるのでもなかったが、がんばって借りたかいのある、とてもいい家だった。イタリア人大家さんの趣味で、あの広さの家にしては素晴らしいキッチンがあり、イギリスに来たきょうだいに温かいごはんを作ってあげられたし、三人で住んでいた間は、二人でいるときよりもっと、数々の美味しい料理を皆で楽しく食べた。静かで落ち着いた環境だったので、普段はキッチンのテーブルで、天気のいい日にはかわいい庭でたくさん本を読み勉強したし、自分にとって重要なものも二つ書いた。また、時間や周りを気にせずかなり自由に音が出せたので、チェロやフルートは意義ある練習ができて上達したとも思う。たくさんの友人がお茶に寄ったり、ごはんを食べにきたり、合奏しにきたり、泊まりにきたりし、昨年末にはもうひとり来て楽しいクリスマス&お正月を過ごした。
家の思い出を語るのに、階下のフランス人のお姉さんを忘れるわけにはいかない。明るくて、陽気で、思いやりのあるお茶目な人で、私たちは彼女の存在に随分元気を貰ったものだ。

つい懐かしくて前置きが長くなってしまったが、昨日ようやく完成した絵は、この家のリービングパーティー&展覧会に向けて描いたのである。題名は、「リサイタル」。チェロとピアノによるリサイタルの会場を描いた。それは、とてもいいコンサートだった。80人くらいお客さんが来て、会場に人が入りきらず、多くの人は立って聴いていた。でも誰も文句もいわず、皆が演奏を楽しんでいた。チェロは明るく華やかでピアノは力強く、春一番が吹いたような清々しいコンサートだった。ブラームスのチェロソナタ第1番とブリッジの Spring Song の演奏をとくに今もよく覚えている。
そのときの写真と会場の雰囲気の記憶をもとに描いたのがこの絵だが、イギリスで展示をしたときにはまだ完成したような気がしていなかった。主には、チェロの色と形が思ったように出せず、不満だったのである。

そのチェリストには、感謝している。簡潔にいえば、彼に出会って人生が楽しくなった。厳しいことを言われて落ち込んだこともあるけれど、チェロも、語学その他の勉強も楽しくなったし、なにより存在そのものが、自分の殻に閉じこもっていた私の内面を大きく拡げてらくに呼吸できるようにしてくれた。

日本に帰ってこの2ヶ月の間に、絵は思っていたよりも傷んでいた。二日かけて全部の箇所に手を入れて修正をし、チェロを描き直して完成とした。絵のトーンが全体に暗くなってしまったのはいまの気持ちの有り様が出たのだが、ともあれ完成したことは素直に嬉しい。

あの家ではこれ以外にもたくさん絵を描いた。それぞれ厳しい時期ではあったのだけど、イギリス生活の最後に、支えあって明るく穏やかな気持ちで暮らせたことが、いまも自分の強さになっていると感じる。一緒に暮らした二人にとってもそうであることを願って止まない。






*この絵はその後もう一度手を入れ、プロフィール写真に載せてあるものになっています。